日本のイノベーション力
世界経済フォーラムは、9月27日付けで「世界競争力報告」(The Global Competitiveness Report)の2017年版を発表しました。各国の「イノベーション」の指標は、

(1) イノベーション潜在能力
(2) 学術研究機関の質
(3) 企業の研究開発投資
(4) 研究開発における産学連携
(5) 先進技術に対する政府調達
(6) 科学者・技術者の対応領域・数
(7) 百万人あたりの国際特許出願の数

という7つの要素に基づいて算出されます(下表)。2017年版の報告では、日本の「イノベーション」の世界順位は8位とされました。直近10年間は4~5位を維持してきましたので、相対的に後退したと言えます。

 

この原因は、「イノベーション」を決定づける「イノベーション潜在能力」の指標の世界順位が8年で急降下しているためと考えられます(下グラフ)。日本では、企業の研究開発投資の規模や特許出願の数は他国と比較して堅調に推移していますが、その潜在能力の低下が懸念されます。なお、他の基準を含む全体的な後退を要因として、日本の国際競争力は2年連続で低下し、2017年は総合9位となりました。

 

加速する事業環境の変化スピード

劇的な技術革新、事業のグローバル化、顧客ニーズの多様化などを背景として、事業環境の変化スピードが世界的に加速しています。すなわち、中長期の変化を予測することが難しくなるに伴って、研究開発に投資するリスクが増大しています。そのため、日本企業の研究開発投資の内訳は、短期的な出口の見えやすい取り組み(既存製品の改良など)に偏重する傾向が増していると考えられます(右図、経産省の参考資料「民間企業のイノベーションを巡る現状」より抜粋)。

企業は、競争力を維持し続けるために中長期を見据えた研究開発活動が重要と自覚しながら、それを実現できておらず、これが日本の「イノベーション」を阻害する原因の1つになっている可能性があります。

オープンイノベーションの重要性
リスクを抑えながら環境の変化に追随し、研究開発を成功に導く方法として、必要に応じて外部から技術シーズを調達する(オープンイノベーションを推進する)ことが考えられます。ここで、オープンイノベーションは、「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」と定義されおり(一橋ビジネスレビュー「オープンイノベーションの衝撃」、東洋経済新報社)、最も一般的には、大学との共同研究(産学連携)を推進することです。

例えば、米国P&Gは、イノベーションの50%を外部(特に、共同研究)との連携で実現するオープンイノベーション目標を打ち出し、研究開発費を抑制したまま純利益を大きく拡大することに成功しています(下図左グラフ、経産省の同参考資料より抜粋)。また、研究開発で外部を活用する企業は、そうでない企業と比較して生産性が高いことが指摘されています(下図右表)。

 

しかし、残念ながら「イノベーション」で高順位の他国と比較して、日本では相対的に産学連携が進んでいません(下の両グラフ)。日本企業は閉鎖的な自前主義で技術を内製化する傾向が強く、国内における技術の流動性は低いままであることを、この調査結果は示していると言えます。この内向きな姿勢が、激しい環境変化への追随を困難にし、イノベーション潜在能力を押し下げる要因になっている可能性が指摘されます。

 

大学との共同研究の難しさ
一方で、「外部の知識を取り込む」ことは簡単なことではありません。企業にとって価値ある「知識」とは「最終的にプロダクトとして利用可能な知識」であるところ、前提・条件・環境などの異なるバックグラウンドから得られる「知識」はそのままでは利用可能でなく、多数の工夫・専門知識・ノウハウが必要となるからです。

例えば、大学の研究室にテーマを与えて研究自体を丸投げ(研究委託)しても、企業にとって価値ある成果にならない場合がほとんどです。企業が研究を主体的に方向付けし、学術研究者が持つ専門知識を「内部化」する仕組みが必要です。

「大学の先端知識を取り込んで研究開発を加速させたい」と考えながら、次のような課題を抱えている企業は、ぜひ一度ご相談ください。

・どこに共同研究を持ちかけるのがベストか分からない
・共同研究を持ちかけようにもコネクションがない
・契約時の権利関係の整理で難航する
・共同研究を円滑に進める方法が分からない
・過去に共同研究をやっていたが成果に結びつかなかった